会社の事業内容(定款の「目的」欄)を変更する際は、定款変更と変更登記申請が必要です。 新しい事業を始めるとき、不要な目的を削除するときなど、目的変更が必要なシーンは意外と多くあります。 この記事では、目的変更登記の手続きの流れ・記載ルール・必要書類・費用をわかりやすく解説します。
目的変更とは
会社の「目的」とは、定款に記載された事業の内容です。株式会社は定款に記載された目的の範囲内で事業を行うとされており、 新規事業を開始したり、既存事業をやめたりする際は定款の目的欄を変更する必要があります。
目的は登記事項であるため、定款変更後に法務局への変更登記申請が必要です。 申請期限は変更の効力が生じた日(株主総会決議日)から2週間以内です(会社法915条)。
目的変更が必要な主なケースは以下の通りです。
- 新規事業を始める:既存の目的の範囲外となる新事業に参入する場合
- 許認可の取得:建設業許可・古物商許可・不動産業など、許認可の申請に目的記載が必要な場合
- 不要な目的の整理:撤退した事業の目的を削除して定款をすっきりさせる場合
- 目的の表現を修正:曖昧な記載や古い表現を現代的な文言に直す場合
目的の記載ルール
定款の目的欄は、何でも自由に書けるわけではありません。法務局への登記が認められるためには、いくつかのルールがあります。
- 適法性:法令に違反する事業は目的として記載できません(例:賭博、麻薬販売など)
- 営利性:営利目的でない活動(純粋な慈善事業など)は一般的に目的として認められません
- 明確性:第三者が読んで事業内容を理解できる具体的な記載が必要です。 「一切の事業」「あらゆるビジネス」などの包括的な記載は認められません
- 前後関係の整合性:「前各号に附帯関連する一切の事業」という包括的な文言は、 具体的な目的の列挙の後に付け加える形で使用できます
許認可が必要な事業(建設業・宅地建物取引業・貸金業・古物商など)を追加する場合は、 許認可の手引きに記載された目的の書き方に合わせる必要があります。事前に各官庁の窓口に確認しましょう。
手続きの流れ
- 新目的の案作成:追加・変更・削除する目的の文言を具体的に決める
- 株主総会の招集:定款変更のため株主総会を招集する(原則として2週間前までに招集通知)
- 株主総会の開催・特別決議:議決権の3分の2以上の賛成で定款変更(目的変更)を決議する
- 必要書類の作成:変更登記申請書・株主総会議事録・株主リストを作成する
- 収入印紙の準備:登録免許税3万円分の収入印紙を購入する
- 法務局へ申請:本店所在地の管轄法務局に変更登記申請書を提出する(決議から2週間以内)
必要書類一覧
目的変更登記に必要な書類は以下の通りです(取締役会の設置有無にかかわらず同じ)。
- 変更登記申請書
- 登記すべき事項(別紙または電磁的記録)
- 株主総会議事録(目的変更の特別決議を記載したもの)
- 株主リスト(議決権の上位10名または議決権割合3分の2以上の株主)
- 収入印紙貼付台紙
- 委任状(代理人が申請する場合)
株主総会議事録には、①開催日時・場所、②出席株主数と議決権数、③議案(目的変更の件)、 ④決議内容(変更後の目的を全文記載)、⑤議長・出席取締役の署名捺印が必要です。 変更後の目的は「第〇条(目的)を次の通り変更する」という形式で新旧対照表形式にするか、変更後の全文を記載します。
→ 目的変更の書類を作成する
費用(登録免許税)
目的変更登記には登録免許税3万円がかかります。 収入印紙で納付するため、郵便局やコンビニで3万円分の収入印紙を購入し、申請書の収入印紙貼付台紙に貼付します。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 目的変更登記 | 3万円 |
| 商号変更を同時に行う場合(別申請) | 3万円(合計6万円) |
登録免許税の詳細は、登録免許税の種類別一覧をご覧ください。
商号変更と同時に行う場合
商号変更と目的変更を同時に行うケースは非常に多く、事業の方向転換時などによく見られます。 同一の株主総会で両方の定款変更を決議し、同時に申請することが可能です。
| 申請方法 | 申請件数 | 登録免許税 |
|---|---|---|
| 商号変更のみ | 1件 | 3万円 |
| 目的変更のみ | 1件 | 3万円 |
| 商号変更+目的変更を同時申請 | 1件(まとめて申請可) | 6万円(各3万円×2) |
申請書は1枚にまとめることができますが、登記すべき事項として商号と目的の両方を記載し、 登録免許税は6万円分の収入印紙を貼付します。
注意点・よくある質問
Q. 目的を追加するだけでも株主総会の決議が必要ですか?
はい、目的の追加・変更・削除はすべて定款変更となるため、株主総会の特別決議が必要です。 取締役会の決議だけでは定款変更はできません。
Q. 何個まで目的を記載できますか?
法律上の上限はありませんが、あまり多すぎると登記申請書の記載が煩雑になります。 実務的には10〜20項目程度が一般的です。また、許認可の取得を目的に追加する場合は、 許認可に必要な目的の文言を正確に記載することが重要です。
Q. 目的変更後、許認可の変更申請は別途必要ですか?
建設業許可・宅建業免許など許認可を受けている場合、登記変更後に許認可行政庁への変更届も必要です。 登記変更だけで手続きが完了するわけではないため、各許認可の所管官庁に確認しましょう。
Q. 現在の定款が見当たらない場合はどうすればよいですか?
定款の原本が手元にない場合は、公証役場で定款の認証謄本を取得できます(設立時に公証人認証を受けている場合)。 または、司法書士・行政書士に相談して定款を再作成する方法もあります。 なお、現在の登記事項から目的の現在状況は確認できます(法務局または登記情報提供サービスで取得可能)。